読者顧客役を頼まれたのですが、どこまで答えればよいのでしょうか。全部話すと練習にならず、黙っていると会話が止まります。



自分たちの商材に合わせて台本を作り、反復練習することが必要です。
顧客役が答える範囲は、練習前にカードで決めておきましょう。相手役の気分で事情が変わると、営業役が直した質問を比べられません。
最初から話す情報、尋ねられたら話す情報、本人にも分からない情報を分けましょう。以下の3場面から選べば、営業役へ答えを見せずに練習を始められます。
この記事では、業務改善・価格比較・導入負担の3場面に使えるカードを用意しました。営業役と顧客役が別々のカードを読み、終わった後に答え合わせする進め方です。
顧客役の仕事は営業役を困らせることではない
顧客役を演じるとき、難しい反論を次々に出そうとすると練習の目的が変わります。質問を確かめる回なのに、値引きや競合や契約条件の問題が増え続ければ、何を評価するか分からなくなるからです。
顧客役は、決めた条件の中で営業役の質問に答えます。
たとえば「作業に時間がかかる」という課題を聞く練習なら、作業の担当者・頻度・困る場面を決めます。営業役が尋ねていないことまで先回りして話す必要はありません。
一方、適切な質問があっても情報を隠し続けるのは不自然です。「詳しくは言えません」を繰り返す顧客役では、質問を変えた意味が確かめられません。
| 顧客役の動き | 練習で起きること | 修正するルール |
|---|---|---|
| 最初に事情をすべて説明する | 営業役が質問せずに提案できる | 最初に話す情報を一文に絞る |
| どの質問にも曖昧に答える | 質問の良し悪しを比べられない | 答える条件をカードに書く |
| 毎回新しい反論を加える | 再実演の条件が揃わない | カードにない事情を追加しない |
| 営業役を助けて質問を教える | 自力で進めた部分が分からない | 助言は練習終了後に渡す |
カードは会話の正解を一つにする道具ではありません。同じ情報へたどり着く質問は複数あります。決まったキーワードが出たかではなく、質問の意味で答えてください。
1枚にまとめず、営業役用と顧客役用に分ける
営業役が答えを知った状態で質問すると、確認したい事実へ誘導しやすくなります。そこで練習前に渡す情報を分けます。
営業役には、商品・面談の経緯・今日の目的だけを渡します。顧客役には、それに加えて現在の状況と回答条件を渡してください。観察役がいる場合は両方を持ちます。


営業役用に書く3項目
- 何を扱う営業なのか
- 顧客とどこまで話しているのか
- 今回の会話で何を確かめたいのか
商品の細かな機能を増やしすぎると、商品知識を答える試験になります。今回は質問の練習なら、その質問に必要な商品情報までに絞りましょう。
顧客役用に加える4項目
- 最初に伝える言葉
- 質問があれば伝える事情
- 今回は分かっていないこと
- 会話を終える条件
顧客本人にも分からない情報があって構いません。社内の担当者に聞かなければ分からないなら、その状態をカードへ書きます。営業役が無理に数字を引き出す場面にしないためです。
カードにないことを聞かれたら
答えを即興で作らず「そこはまだ把握していません」と返します。終了後に、練習に必要な質問だったかを検討してください。
必要な情報なら次の版のカードへ追加します。最初の実演途中で設定を書き換えず、変更後の練習は別の条件として記録します。
カード1|業務の負担がどこで生まれるかを聞く
この場面では、顧客の「時間がかかる」という言葉を具体的な作業へ分けます。営業役の目的は、すぐ商品を紹介することではなく、負担の発生箇所を相手と揃えることです。
営業役に渡すカード
営業役は、社内報告をまとめる業務支援サービスの担当者です。顧客からは「報告に手間がかかるので話を聞きたい」と連絡がありました。今回は最初の面談です。
使える機能は、入力情報の集約と報告書への転記です。サービスでどの作業を減らせそうか判断するために、現在の業務を聞いてください。
終了時には「誰の、どの作業に、どのような負担があるか」を一文でまとめます。顧客に確認し、違う部分があれば直します。
顧客役だけが読むカード
最初に話す言葉は「毎週の報告に手間がかかっていて、何とかしたいです」とします。具体的な原因は、質問に応じて伝えます。
| 聞かれた内容 | 顧客役が答える情報 |
|---|---|
| 誰が作業するか | 各担当者が入力し、最後に自分がまとめる |
| どこで時間がかかるか | 入力漏れの確認と、書き方の違いを直す作業 |
| いつ負担が大きいか | 締切直前に確認が集中する |
| すでに試したこと | 記入例を配ったが、古い様式を使う人が残っている |
| 自動化したい部分 | 転記だけでなく、確認が集中する状態を減らしたい |
| 正確な作業時間 | 計測しておらず分からない |
営業役が「転記に時間がかかるのですね」とまとめたら、確認と修正の負担が大きいことを伝えてください。「そうですね」で合わせてしまうと、要約のずれを直す練習ができません。
観察するポイント
- 顧客の最初の言葉だけで原因を決めなかったか
- 分からない時間を無理に数字で答えさせなかったか
- 最後の要約に顧客の修正を取り込んだか
このカードでは「作業時間を聞けたか」だけを採点しません。数字が不明でも、負担の発生箇所と次に調べる内容が揃えば会話は前に進みます。
質問項目そのものを整理したいときは、営業ヒアリングシートの8項目も使えます。カードは相手役の回答条件を揃える用途、シートは商談で分かったことを残す用途です。
カード2|「高い」の比較対象を確かめる
価格への返答を練習するとき、営業役が値引きの説明を始める前に何を聞くかを確かめます。「高い」という言葉だけでは、予算超過なのか、別商品との比較なのかが分かりません。
営業役に渡すカード
営業役は、同じ業務支援サービスの見積もりを説明し終えたところです。顧客から「思ったより高いですね」と言われました。
今回の練習では金額を変更しません。顧客が何を基準に高いと感じているか、比較に必要な条件は何かを確かめます。具体的な金額は双方で事前に決めてカードへ記入してください。
顧客役だけが読むカード
顧客役は、別サービスの広告に出ていた月額を見ています。初期設定やサポートの範囲はまだ確認していません。自社の正式な予算上限も決まっていません。
| 聞かれた内容 | 顧客役が答える情報 |
|---|---|
| 何と比べているか | 別サービスの広告に出ていた月額 |
| 比較した料金の範囲 | 初期費用や追加料金までは見ていない |
| 必要な支援 | 最初の設定を一緒に進めてほしい |
| 社内の予算 | 上限は未確定。内容を見て相談する予定 |
| 残る不安 | 安い方で十分なのか判断できない |
営業役がいきなり「品質が違います」と説明した場合は「どこが違うのか、まだよく分かりません」と答えます。競合サービスの内容を顧客役が勝手に補ってはいけません。
比較表を完成させる練習にする
営業役は、月額・初期費用・支援範囲・利用条件のうち、確認できたものを言葉で揃えます。調べていない欄は、その場で推測せず次に確認する項目へ移します。
終了条件は、どちらの商品を買うかが決まることではありません。比較する条件と、まだ調べる必要がある情報を顧客と共有できた状態です。
値引きに進む前に、何を比べている会話なのかを揃えます。
同じ「高い」でも、予算の上限が確定しているケースなら別のカードにします。最初のカードを終えてから条件を一つ変更すると、返答を使い分ける練習になります。
カード3|導入したいのに担当者の時間が取れない
顧客が商品の価値に納得していても、実施する人の予定が決まらなければ導入は進みません。このカードは、購買意欲と実行条件を分けて聞く練習です。
営業役に渡すカード
顧客は、業務支援サービスの内容に関心を示しています。ただし「今は忙しいので、時期を見て考えます」と話しています。
営業役は、開始時期をその場で約束してもらう前に、導入準備のどこが難しいのかを聞きます。できることとできないことを分け、次に確かめる相手と内容を決めてください。
顧客役だけが読むカード
顧客役は導入を検討していますが、社内の設定担当者が別業務で埋まっています。上司はサービスの概要だけを知っており、導入作業の分担までは話していません。
| 聞かれた内容 | 顧客役が答える情報 |
|---|---|
| 何が忙しいか | 設定を担当する人が別プロジェクトへ参加している |
| 自分で進められる範囲 | 現在の報告様式を集めること |
| 相談が必要なこと | 設定担当者の作業時間と上司の了承 |
| 営業側へ求める情報 | 導入作業の一覧と、各作業の担当範囲 |
| 決められないこと | 正式な開始日と担当者の確保 |
営業役が「来月なら大丈夫ですか」と先に日程を提案したら、担当者と話さないと分からないと答えます。日付を繰り返し尋ねられても、その条件は変えません。
終了時に残す3点
- 顧客が先に集められる資料
- 営業側が渡す導入作業の情報
- 顧客が社内で相談する内容
営業役の評価は、予定を無理に確定させたかではありません。決められない理由が具体的になり、確認する順番を揃えられたかを見ます。
顧客役が即答できない状態も大切な設定です。沈黙を避けるために簡単な答えを出すと、実際には決まっていない条件が見えなくなります。
質問が変わると、顧客役の返答はどう変わるか



回答表どおりに答えると、ただの答え合わせになりませんか?本番らしい会話も練習したいです。
返答の内容を固定しても、営業役の質問まで固定する必要はありません。業務負担のカードなら、次のように質問の種類に合わせて返します。
| 営業役の質問 | 顧客役の返答 | 観察すること |
|---|---|---|
| 報告ではどんな作業をされていますか | 担当者の入力を集め、漏れを確認してまとめています | 広い質問から作業の流れを聞けたか |
| 転記が大変なのですよね | 転記もありますが、入力漏れの確認が大変です | 営業役の決めつけを訂正できたか |
| 漏れの確認はいつ増えますか | 締切の直前です。古い様式を使う人への確認が重なります | 返答を受けて発生条件へ進めたか |
| それなら自動化したいですよね | 何を自動化できるかによります。確認が集中するのを減らしたいです | 商品へ誘導せず解決したい状態を共有できたか |
観察役は質問の数よりも、前の答えを次の質問に使えたかを見ます。漏れの確認が問題だと分かった後に、台本へ戻って「何人で使いますか」と進めるだけでは、課題の理解が途切れます。
ここで営業役が「入力方法を揃えれば解決しますか」と尋ねたら、顧客役はカード内の「記入例は配ったが古い様式が残っている」を返します。質問の言い回しが例文と違っても、意味が合えば情報を出せます。
顧客役自身の振り返りも一行残す
練習後は営業役の評価だけで終わらせず、顧客役も「どの質問に、何を答えたか」を照合します。質問されていない原因を先に話したなら、次回はその情報を出すタイミングを直します。
| 確認欄 | 記入例 |
|---|---|
| 情報を出したきっかけ | どの作業に時間がかかるかを聞かれた |
| 実際に返した情報 | 入力漏れの確認が締切直前に集中する |
| カードとのずれ | 上司の承認が遅いという未設定の事情まで加えた |
| 次回の修正 | 承認の事情は外し、同じカードで再実演する |
これなら質問が良くなったのか、顧客役が答えを増やしただけなのかを分けて振り返れます。
AIを顧客役にするときも、答える条件を渡す
AIを相手役にする営業練習も登場しています。SalesforceのAgentforce Sales Coach公式案内では、対話形式のロールプレイとフィードバックが説明されています。
道具が変わっても、この記事で確かめたいのは「どの質問で必要な事情が分かったか」です。AIへ単に厳しい顧客を演じるよう頼むより、次の条件をカードへ添えて使います。
- 開始時はカードの最初の一言だけを話す
- 質問の意味に対応する情報を答え、未設定の予算や事情は追加しない
- 会話中は営業役へ模範質問や採点を教えない
- 終了後に、各情報を出すきっかけになった営業役の発言を示す
たとえば「予算はまだ決まっていない」と設定したのに、途中でAIが具体的な上限額を答えたら、その回を価格確認の成功例には数えません。発言記録とカードを照らし、設定を戻して試します。



AIの評価が高ければ、人に見てもらわなくてもよいでしょうか?



SSCでは課題を提出してもらい、それにフィードバックを返す形を取っています。
AIの点数だけでは、人に質問が伝わるかまでは確かめられません。応答記録を残し、人に見てもらう際は「この質問で事情を引き出せているか」と確認箇所を渡しましょう。
AI相手には言えた質問が、人を相手にすると長くなることもあります。同じカードで人にも一度答えてもらえば、言葉の伝わり方まで確かめられます。
再実演では顧客役の条件を変えない
1回目の練習が終わったら、営業役が変える行動を一つ決めます。質問の順番、質問の長さ、要約の仕方など、次の実演で観察できる形にしてください。
顧客役は同じカードを使います。営業役の質問が変わった結果、前回は出なかった情報が出ることはあります。ただし、持っている事情そのものを変えてはいけません。
| 記録欄 | 記入例 |
|---|---|
| 使用カード | 業務の負担・版1 |
| 最初の会話で起きたこと | 転記が原因だと思い込み、確認作業を聞かなかった |
| 変える行動 | 負担が大きい作業を尋ねてから要約する |
| 2回目に確かめること | 要約へ確認作業の負担が入ったか |
| 次の課題 | 担当者と締切も含めて整理する |
「前より良かった」だけで終えず、変わった発言を記録します。顧客役は、どの質問で答えやすくなったかを伝えると、営業役が修正箇所を捉えやすくなります。
もし2回目でも同じ情報を聞けなければ、原因をさらに細かくします。質問を忘れたのか、言葉が曖昧だったのか、相手の返答を待てなかったのかで次に練習する行動が変わります。
自分の商材に置き換えるときの注意点
カードの業種名だけを置き換えると、質問と回答が実際の仕事から離れることがあります。変えるのは商品名だけでなく、顧客が困る作業と決めるための条件です。
まず、自分が説明できる商材の機能を選びます。次に、その機能が関係する顧客の作業を一つ置きます。最後に、まだ分かっていないことと会話の終了条件を決めます。
顧客名や実際の案件情報を使う必要はありません。練習に必要な構造を残し、固有名詞や契約情報を外してください。記録を共有する範囲も、勤務先の運用に合わせます。
難易度を上げるときは、一度に条件を増やしません。顧客の情報量を減らす回、相談相手が増える回、時間が限られる回を分けると、つまずきの原因を追いやすくなります。
よくある疑問
- 顧客役は厳しくした方がよいですか
-
厳しさより設定の一貫性を優先します。基礎を確かめる回なら、意味の通る質問には自然に答えます。難しい反応を練習したいときは、その反応をカードに追加してから始めましょう。
- 答えを知っている人同士でも使えますか
-
使えますが、未知の情報を聞き出せたかの評価には向きません。質問の言い方や順番を比べる練習として使ってください。情報を知らない相手役に替える場合は、カードの読み合わせから始めます。
- 正解の質問文も用意しますか
-
最初の練習で参考文を用意する方法はあります。ただし、同じ意味の質問まで不正解にしないでください。確認したい情報と、相手に伝わる聞き方が対応しているかを見ます。
次の練習ではカードを一つだけ使う
3場面を続けて消化するより、まず自分の商談に近い一つを選びましょう。営業役用と顧客役用を分けて読み、実演後に両方を開いて答え合わせします。
同じ設定で言い方を変えると、何を直したのかを比べられます。
ロープレ全体の時間配分や自己評価は、営業ロープレの進め方にまとめています。カードはその中の一場面へ組み込んで使ってください。
台本と反復練習については、公式動画の6分54秒以降で確認できます。学びを実演へ移す環境を検討するときは、SSCの学習内容もご覧ください。









